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木の気の記

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今年の春にフリーペーパー「てくてくno.13」に載せていただいたコラムのご紹介です。

日本の国土の約7割は森で囲まれています。
普段私達は、その事をあまり意識する事は無いですが、広い世界を見渡してもこれほど豊かな森に囲まれた国というのは稀です。(世界の平均は3割だそうです)
日本は豊かな自然と四季があるお陰で、独自の生態系と文化をうみだしてきました。
私達が毎日使っているお箸や、お椀をはじめ身のまわりには、木のモノが沢山ありあます。
この事は、あたりまえのようで、実はとても特別な事なのです。

日常にある幸せは、失う事が現実味を帯びないとなかなか気づかぬものですが
私達の周りに沢山ある木製品は、もはやこの森で取れたものではなく、ほとんどが輸入されたモノで囲まれているだけなのです。
これほど多くの森に囲まれていながら、日本の木材自給率は28%といわれています。
残りの72%は日本より森の少ない国から運ばれてきています。
この現実はあまり知られていません。

奈良にある法隆寺西院伽藍は、世界最古の木造建築物です。
この建物に使われていヒノキやケヤキは1300年経った今でも、木を削ると独自の香りがしてくるするそうです。木のにおいは、害虫や菌から自らの身を守るための体臭のようなもので、木は切り倒された後も、まるでまだ生きているかのように空気中の水分を吸ったり吐いたりして伸縮を繰り返し乾燥していきます。
私が普段家具にする材料は、よく乾燥させた木を使いますが、
それでも加工していく段階で少なからず動いてきます。
この動きに逆らって、急いで仕事をしたところで良い家具にはならず、
どのように動くのかをよく読み取って組み立てていかねばなりません。
とても気の長い話ですが、木の癖を読んで作られた家具は人間の寿命より遥かに長い命が再び吹き込まれるのです。 

豊かな森の恵みによって創られた美しい日本の文化は、現代の私たちの暮らしにも深く根付いています。
他に類をみないこの独自の文化こそが私達のアイデンティティーであり、世界に誇れるものです。
一人ひとりがそこに目を向けることで、日本は豊かな森と失いかけている沢山のものを取り戻せると信じています。
by kozan-japan | 2011-11-05 12:19 | 言葉
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