一万円のお椀

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この世界に入ってから私の価値観はそれまでとはまるっきり変わりました。
ごく普通の家庭で育った私の実家には上等の器も無ければ、漆のモノはお土産モノ位しかありません
作家ものの器など存在自体知りませんでした。

十代後半に家を出て木工の学校に通いはじめた頃は
しっかり作られた漆の汁椀が1万円以上するなんてまったく信じられず
なんでそんなに高いんだ? 嘘だろ!? とまで思っていました。

今はというと、しっかり作られた1万円の漆のお椀は安いと感じます。
10年前とはまるっきりモノを見る目が変わったのです。

これは私が工芸の世界に足を踏み入れ
色々なモノを見て その背景を知り
気に入ったモノを普段使いとして大切に使ってみて初めてわかった事です。

幼い頃からそういうモノと共に暮らしていなくても
モノのよさは、誰もが共感できるものなのです。

戦後、何もない時代から時代は変わり今はモノで溢れかえる日本
使わないモノを溜め込み
もったいないと言って普段使いのモノはその場しのぎのモノでやり過ごす。
壊れたら新しく買えばいいのさ.... とっ。

そのこと自体がもったいない!

忙しい現代人の日常こそ豊かであってほしい!
それは決して世に言う贅沢ではなく 心の贅沢です。

自分の暮らしを見つめ本当に必要なモノを吟味して選ぶ
上質なモノを長く大切に使う日常のほうがよっぽど豊かな暮らしだと一部の人は知っています。


そしてそんな使い手が一人でも多く増えれば色々な物事がよい方向に向かっていくのだと信じています。


(左のお椀は友人が作っている漆塗り 右のお椀はどこにでも売っている安物 見ただけでは違いはわかりませんが、使ってみるとまったくの別物 値段は100倍以上違いますが、幸福感も100倍以上違います。右の安モノのほうが実は高い買い物なのだと思います。)



  
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by kozan-japan | 2012-11-05 22:14 | 暮らし
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